アートとは何か?障害の有無や国籍を問わず、アートの魅力に迫る展示会!

現在、アーツ千代田 3331でアート展、ポコラート世界展「偶然と、必然と、」が開催されています。この展示会では、障害の有無、性別、プロ・アマや国籍を問わず、世界22ヶ国50名の作家の240点余の作品が展示されています。中には、展示目的で生まれていない素晴らしい作品もあり、アートの定義について深く考えさせられます。

ポコラート世界展 「偶然と、必然と、」では、独自の観点でキュレーションした作品とそれらを生み出したアーティストたちが紹介されます。

アーツ千代田 3331

展示会のタイトル「ポコラート(POCORART)」とは、Place of “Core+Relation ART”「障がいの有無に関わらず人々が出会い、相互に影響し合う場」、そしてその「場」を作っていく行為を意味している名称です。このプロジェクトは今年で10周年を迎え、今回は特別に大きいアート展が開催されていて必見です!

入口の大きなキービジュアル

 

アートは偶然に生まれる?必然的に生まれる?

解説は全て英語と日本語で書かれています。

展示は6つのテーマで構成され、異なる観点でアーティストの創造過程とアートを生み出す動機や背景にスポットを当てています。

最初のテーマは「宇宙のこころ 内なる人格と仮面」と名付けられています。人間は自分自身の存在に気づき、つまり「わたし(=自分)」に出会った時、その「わたし」をどのように表現するのか?外から見た自分と、自身が持っている自己イメージのギャップで苦しんだりする人もいます。そういった気づきや葛藤から生まれた作品が展示されています。

トマシュ・マフチンスキ Tomasz MACHCIŃSKI(ポーランド)《無題》孤児院で過ごしたトマシュは、アイデンティティの喪失から、様々な人になりきり、「自分」を再定義し続けています。1966年から今日まで2万枚以上のセルフポートレートを撮ってきたのですが、展示するために始めたプロジェクトではなくて、あくまで「自分」のために始めた作業です。

ハラルト・シュトファース Harald STOFFERS(ドイツ)《無題》 精神科の施設で過ごしているハラルトは手紙やメッセージを書くのが好きで、いつの間にかお母さんに対して、この6メートルもある手紙を書いたとか。展示室の天井が低いというのもあって、展示するにも一苦労だったそうです!
与那覇 俊 YONAHA Shun(日本)《巨人病院III(恒河沙新世界)/Giant Hospital III (The profusion of new world)》頭の中に浮かぶ言葉や欲望を絵に描き始めたことから生まれた作品シリーズ。作家が何も隠すことなく、自分の欲に真正面から向き合った作品は謎解きのような、漫画のような、不思議な魅力を放つ物語になっています。

マルク・モレ Marc MORET(スイス)《ママのコラージュ/Mom’s Collage》 亡くなった母の遺品を集めて作られたオブジェ。アート作品としてではなく、母を思い出すための物として作られたそうです。

 

プロの道具がなくても生み出される作品たち

武田 拓 TAKEDA Hiraku(日本)《はし/Chopsticks》

日常生活で接したモノに影響を受け、衝動的に作品を作り始めたアーティストもいます。中でも、割り箸でできた作品が印象的でした。作家が仕事中、使用済みの割り箸を廃棄するためにバケツなどに刺すように集めたら、いつの間にか有機的なオブジェが生まれたそうです。

たまたま福祉施設でチラシを使ったコラージュを作ったことがきっかけで、チラシ広告をボンドで固めて、大理石のようなオブジェを作り始めた日本人アーティスト。金崎 将司 KANASAKI Masashi

さらに、自分が育った環境や文化も作品に影響を与えます。

家族を亡くした喪失感から、人型に切った紙を枝に貼り付け始めたインドネシア人アーティスト。ニ・タンジュン Ni Nyoman TANJUNG
飛行場の近くに住むナミビア人アーティストの作品。よく見ると、実際の飛行機とは異なる、独特な形をしています。イマニュエル・マペウ Imanuel MAPEU《無題》
もともと砂に埋もれて固定された作品だったため、美術館の平らな床ではなかなか安定しなかったそうです。
必ずバッドエンドで終わる作品しか描かないアーティストの作品シリーズ。本展覧会のキューレーターである嘉納(かのう)さんや彼が所属する施設の職員の方々もいつの間にか彼の作品に登場するようになり、この作品の中で殺されているそうです。黒田 勝利 KURODA Katsutoshi(日本)

中国人アーティストが気功を学んだことがきっかけで描き始めた独創的な作品。郭 鳳怡 GUO Fengyi

展覧会のハイライトは、ドイツから貸し出され、日本で初公開の作品です。

無数の紙に描かれたのは「暗号」。10年間ですでに25万枚以上の暗号を描いた作家ワンダ・ヴィエーラ=シュミットは、自分とドイツ国防省のコンピュータしか解読できないものだと主張しています。グループホームに引っ越す際、大事な紙の新たな保管場所を探した結果、実際にドイツ連邦国国防軍の軍事歴史資料博物館に所蔵され、話題を呼んだ作品です。

ワンダ・ヴィエーラ=シュミット Vanda VIEIRA-SCHMIDT《世界救済プロジェクト/World Rescue Project》

アートを作ろうとして始めた作業ではなくて、あくまで「自分」のため、「記録」のため、もしかしたら「生きるため」に生まれた作品の数々。

しかし、アートを作る目的で作られていないものを「アート」として分類してもよいのか?今回の展覧会で展示されている作品は様々なきっかけによって偶然に生まれたり、内面から湧き上がる強い衝動によって半ば必然的に生み出されたりしたもの。展示を見てまわる時、私は思わず「不思議!」という言葉を連発しました。驚きの連続でした。秀逸なキューレーションによって選定された作品たちのおかげで「アートとは何か?」、そして「障害とは何か?」について深く考えるきっかけになりました。


ポコラート世界展
偶然と、必然と、障害のある人、ない人、
アーティストの生の表現を世界に解き放つ。

https://pocorart.3331.jp/world2021/ (日本語)
https://pocorart.3331.jp/world2021/en/index.html (英語)

日程:2021.7.16(金)~9.5(日)会期中無休
料金:一般 800円 / 65歳以上は500円
※千代田区民は身分証のご提示で無料
※8/14(土)・8/15(日)・8/21(土)・8/22(日)のいずれの日も11時から、
千代田区民向けツアー(無料・約50分)を行います。お子様、大歓迎!
※ご来館時にはマスクの着用、手指の消毒、スタッフによる検温、入館票のご記入をお願いします。

アーツ千代田3331

https://www.3331.jp (日本語)
https://www.3331.jp/en/ (英語)

東京都千代田区外神田6-11-14
Google Maps: https://goo.gl/maps/a1bHxdgagrFynQyJ9
最寄駅:末広町駅、湯島駅、上野御徒町駅、御徒町駅、秋葉原駅、御茶ノ水駅