日本の近現代美術史を振り返る「MOMATコレクション」! あなたの心に刺さるアート作品は?

「MOMAT コレクション」では、13,000点を超える所蔵作品から選りすぐりの約200点を、会期ごとに3 フロア、12〜13の部屋に分けて展示しています。今回のコレクション展の小特集のテーマは「同時代の収集」と「詩と造形」です。19世紀末から現代までの日本美術の歴史を、海外作品と照らし合わせながら知ることができます。

東京国立近代美術館

コレクション展は「ハイライト」から始まる

「MOMATコレクション」の順路は4階からスタートして、2階まで降りていきます。最初の部屋はいきなり「ハイライト」の部屋です。

日本語、英語、韓国語、中国語、そして子供向けのガイドアプリを無料で利用できます。
ハイライト室の展示風景

過去のコレクション展に何度も登場している“常連の作品”もあれば、新しい作品にも出会えます。

100年前の作品だと思えない新収蔵作品。速水御舟《渓泉二図》1921年

作品の全体的な組み合わせを楽しんだり、見る順番で新しい発見ができるのはコレクション展のちょっとした「通」の楽しみ方かもしれませんね。
例えば、こちらは一年前のコレクション展の展示の様子です。

(手前)荻原守衛 《文覚》(1908年)

そして、こちらは今年のハイライト室での展示です。

手前)荻原守衛《女》1910年、(後ろ)萬鉄五郎《裸体美人》1912年

女性の銅像と女性の絵画の組み合わせは同じですが、少し進むと、また別の女性の油絵に出会います。

安井曽太郎《金蓉》1934年

随分と雰囲気が違いますね。この作品のモデルは誰だったのか(5カ国語を操る天才の女性)ということはわかっています。しかし、よく見てみると、角度や影が不自然で、細かいディテールもあれば、かなり大胆に塗られた箇所もあります。

国吉康雄《誰かが私のポスターを破った》1943年 (寄託作品)

さらに進めば、西洋人に見える女性が描かれています。こちらは第二次世界大戦中に描かれた作品で、当時のアメリカで日本人画家として最も成功したと言われている国吉康雄の作品です。

小特集のテーマにも注目!

2室〜5室では、1900〜1940年代の作品が展示されています。油絵を学びにヨーロッパへ渡る若い日本人アーティストが多くて、ヨーロッパの技法の影響を感じられる作品が多くあります。

展示風景
当時24歳のアーティストが描いた遭難した船乗りたち。その光と肉体美に注目!
和田三造《南风》1907年、重要文化財

今回のコレクション展には2つの小特集があります。その一つは「ポエムの言い分」というタイトルで、3室〜5室では詩にまつわる作品を紹介しています。詩とアートの関係性、交流や連帯について考えさせられます。

ついつい真似てみたくなる作品も… 高村光太郎《手》1918年頃

東京国立近代美術館(MOMAT)は、積極的に作品の解説動画や裏舞台を紹介する動画を公式YouTubeチャンネルにて公開しています。高村光太郎の《手》についての解説動画があります!

(https://www.youtube.com/watch?v=-yxmurrfOKM 言語は日本語、字幕は日本語と英語)

アート作品を自分の直感で感じとるのは楽しいですし、私もどちらかというとあえて事前学習せずに美術館での“出会い”をまず味わいたい派の人間です。その後に聞くキュレーターによる愛とこだわりに溢れたトークはやはり別格です。MOMATのYouTubeチャンネルはおすすめです!

私マライのお気に入りの作品はこの赤い木像です。橋本平八による作品ですが、実は弟の北園克衛が詩人で、「異色の芸術家兄弟」として知られているそうです。

怒っているのか?我慢しているのか?こんなに小さいのに、ムスッとしている表情がたまりません! 橋本平八《達磨》1934年
美しすぎる銅版プリントとポエムの展示風景

世の中が戦争へ向かう中、アートの行方は?

次のパートは、第二次世界大戦へ向かう日本を生きたアーティストの作品が展示されている部屋。たくましく戦う兵士を巨大な絵画にして描く画家たち、そして不運な空気感を絵にしている画家たち。もし自分がこの時代をアーティストとして生きていたら、いったい何を描いていたのでしょう?

叆光《有眼睛的风景》1938年
こちらは新収蔵の作品で、銅像に見えるが、木像なのです。辻晋堂《诗人(大伴家持试作)》1942年

この時代を象徴する作品を探せ!

今年12月、東京国立近代美術館(MOMAT)は開館70周年を迎えます。その名前の通り、「近代美術」に重点を置いていますが、オープンしてから今までずっとその時々のアーティストの作品を紹介し、収集し続けてきました。キュレーターたちのセンスが問われるこの作業は、楽しそうではありますが、大変なお仕事ですね!

展示風景。奥の辰野登恵子の作品は、キュレーターの成相さん曰く「とにかくいい!これは説明できないが、長く見れば、きっとわかります!」
ドイツ人画家の作品を眺めるドイツ人の私マライ。11室には、企画展ギャラリーで開催の「ゲルハルト・リヒター展」にあわせ、MOMATコレクションからリヒターの作品と、同時代のドイツの作家による作品を展示。

日本の美を感じる癒しゾーン

3階最後の展示エリア(10室)には、1900年から現代までの日本画とアート作品が紹介されています。座るための椅子が用意されていて、ゆっくり眺められる日本のアートは癒しそのもの!

摩訶不思議な箱と茶器たち。デザインとその美しさに感銘を受けました!(左上から)黑田辰秋《脱胎耀贝螺钿撞盒》1974年、《耀貝螺鈿飾文筺》1974年、《耀贝螺钿装饰文房盒》1957年頃、《螺鈿白蝶縞中次》1974年頃、《金鎌倉五稜茶器》1980年頃、《白檀塗四稜茶器》1975年頃(展示は7月24日まで)
こちらの作品は、造園家になったばかりの息子(三男)のために描いたもの。川端龍子《新樹の曲》1932年(展示は7月24日まで)

今回は「MOMATコレクション」のほんの一部しかご紹介できていません。コレクション展をゆっくりまわろうと思えば、半日はかかると考えておいた方が良いでしょう。ぜひ、あなたの心に刺さるアート作品を探してみてください。
最後に、キュレーター成相さん一押しの作品をご紹介します。

展示風景(手前)長谷川三郎《オルレアン街道の雨》1930年

所蔵作品展「MOMAT コレクション」

(英) Collection Exhibition MOMAT Collection
会場:東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー 4階から2階
会期:2022年5月17日(火)-10月2日(日)
休館日:月曜日[ただし7月18日、9月19日は開館]、7月19日(火)、9月20日(火)
開館時間:10:00-17:00(金・土曜は 10:00-20:00) ※入館は閉館30分前まで
※途中で作品の入れ替えあり。

 

東京国立近代美術館(The National Museum of Modern Art, Tokyo)

https://www.momat.go.jp
Twitter: https://twitter.com/MOMAT_museum
Facebook: https://www.facebook.com/momat.pr
YouTube: https://www.youtube.com/user/MOMAT60th

千代田区北の丸公園3-1
Google Maps: https://goo.gl/maps/UrVmJReZ5Vo6hUhB9
最寄り駅:竹橋駅、九段下駅、神保町駅